あすにしずむ

(´A)<誰かのために沈めるか

ブルーロックという漫画を買って読んだ。いわゆるちょっとリアルから外れたファンタジー系のサッカー漫画。表現が派手な感じのやつ。

主人公は地区大会で成果が出そうなレベルのストライカー自身のエゴを通せず、パスを選択し地域予選で敗退する。そんな折に強化指定選手に指定される。向かった先には同世代のストライカーがそろう。これから青い監獄・ブルーロックで、世界最強のストライカーを作る実験が始まる。

ざっくりストーリー。その後主人公は、ストライカー11人でチームを構成する。でもそれじゃあサッカーにならない。誰かが守備をし、誰かがゲームを作らないといけない。ローテでこなしてみたりと工夫が続く。

でも、キーパーだけは伊右衛門送人というキャラで固定される。

いえもん・おくりびと そう。本木氏。モックン。ごつくなったモックン。

本人の意思であり、当初こそじゃんけんで負けたからであったが、チーム戦術と勝利のためにストライカーを作る実験でキーパーを選ぶ。ある意味で仕方がないことなんだけど、こういう人間って大切。

自身はオールラウンドタイプなストライカーであることを標榜しているが、ストライカーポジションと真逆の位置に配置されている。体格を生かしたビッグセーブを見せるけど、こういう人間が評価される時代になってほしいなと。漫画を読みながら思う。

この漫画はサッカー漫画よろしく派手な描写で得点や才能の覚醒を描く。漫画を読む側にしてみれば、どういう立場で見ても、例えば『こんなことありえない』という目線、『おもしれー』という目線、どちらでもチーム戦術とストーリーのために犠牲になるものに目をあまり向けない。

でも主人公チームが生き残っているのは伊右衛門が守っていたからだ。この事実は変わらない。

スラムダンクにおける木暮先輩ポジション。桜木を育成することはチームを確実に強化するけど、自分は確実にスタメンから遠のく。3年間頑張ってきて、同級生が厳しい練習を課して部員が減る中でも支えてきた。そこまでやってきてスタメンになったのに、チーム強化のために、自身のスタメンを外れるための選択を選ぶ。

メガネ君や伊右衛門はチームのために自己の意思に反している。未来の自己実現を大きく狭める。ストレスなしでやっているのだろうか。漫画のキャラながら感情移入してしまう。勝てばすべてが報われるのだろうか。運動部に所属していたが、きっと違うだろうなと。

ガキみたいな話、自分が活躍してチームが勝つのが最高に決まっている。次を選ぶなら、自分が活躍してチームが負けることかもしれない。

ブルーロックのもう一つのテーマに『ストライカーはエゴイストたれ』というものがある。もうそのレールから外れている。盛り上がるシーン配分頼むよー作者さー。

自分が伊右衛門氏やメガネ君のようにチームのための犠牲をしているわけじゃないけど、その大切さを思い出させる作品。単行本で読むとスピーディーで面白いけど、読み込むというか、気持ちを落とし込むスペースがたくさんある。

何かのために犠牲にすることは、成果が出れば報われて、骸になっても笑えるのだろうか。学生時代を振り返ると、そんな出来た奴いなかったよなぁ。