視野が広がってゆくように 

フィーリングという購入に際してのハードルがある。

買ってしまった後の落とし穴ともいえるが。フリマアプリなんかを覗くと、フィーリングが合わないから出品などという文言が目立つ。やっぱり大事になるんだよねって感じる。

しかしこれは個人の問題というか、決して誰とも正解を出すことが出来ない課題でもある。何に比重を置いているのか。これまでの購入履歴など……性能的な良さ以外でも評価してしまう部分でもある。

ショップの人もフィーリングのいい感じのものを薦められると困ると思う。これは自分の考えであって、誰かにフィットするものではないから。
競技用…トリックを覚えるためのフィーリングの改善。たとえば回転する時間を長くしたり、滑りや戻りの良さを好みにすることでのフィーリングの改善や向上はセッティングで可能ではある。でもフィーリングという部分をほじくるとき、それは性能の個人的な最適化であり、フィーリングを寄せたかというと少し違うように感じる。

よく回り、自分の好きなトリックやプレイスタイルに合致することのみがフィーリングという言葉を表現はしない。
例えば、個人的にフィーリングがよかったな……アレと思うヨーヨーはざっくりだけどクラウンst7075のようなストレートモデル。moulのMやオブセッション。ダンカンのフリーハンドALなんかが該当するだろうか。
重さほどほどで、これもフィーリング的な単語選びなのであてにしないでほしいけど、シームレスなんだよね。スピードが出るかとかではなく、動きがマイルドで段差がない感じのものが好き。競技用のシャープさもいいんだけど、急な加減速が可能なのではなく、ほかの解決方法を見ることが出来る。緩い訳じゃないよ。

あとストレート独特の横への動きの力の不要さもグッド。スイッスイのテンテンって感じ。言ってて情けなくなったわ。
競技用の見方をするとどうしても出来る出来ないの話や、効率の話になってしまう。それが一番大事ではあるんだけど、それ以外の個性も語れるのがフィーリングというやつ。それはさも性癖に似ているかもしれない。どれがいい?というと中々、一番には語れないやつ。

というわけでパノラマ。しっとりのとんとんという感じです。
まず単純にアケポンをするときに少し細めの紐を使ってほしい。ノーマルでどうかなって感じ。滑りはいいんだけど、バインド時いつもの紐だと強く、それこそゴムひものように戻ってくる感じがある。いつもより強めに引っ張ってから遊ぶか、細目チョイスもいいかもしれない。
ボディの感触はキャッチの際の痛みにも対応したデザインで、うっかりゴム紐戻りをしても、痛みを感じないグッドデザイン。そのトラピーズ幅からトリックの成功率を下げる、一種特訓用のモデルのように見えてしまうが、キャッチや投げ出しのしやすさという利点がある。傾きやすさもあるが、幅広に対しての幅瀬間であり、特にボディ外周までの形状のおかげかすぐに気が付く。目に入る。

修正を行えば特にこれといって問題を感じないのは、似たような形状で遊んでいた97ハイパー世代の古の記憶のさだめか。
フィーリングのみで話してしまうと、投げ心地の良さは最高クラスなんだけど、傾き安さを鑑みても細かな動きにも適応。もう少し気持ち軽いのが俺のポイントだったかなと。でもトリック成功とかで測れない遊びやすさや、いつもの遊び方からはできない脳への刺激のようなものを感じる。
例えばいつもやる手癖のようなトリック。ちょっと面倒な手順を入れていても、最新のヨーヨーたちはそれをカバーする動きがある。パノラマではそれを補わない。じゃあどうするのってところ。パノラマでも可能なような練習を重ねるっていう返答ではなく、どのようにすればパノラマが答えるのかって視点になる。

トップスピードでの運用ではなくよりどうすれば見栄えもよくなり、どこを重点的なものに昇華してゆくのか。サササとできるトリック。音楽に合わせるトリック。それ以外ではなく、トリックとしての個人の見識を深めることが出来る。
例えば、簡単なのはサマーソルト。何気なくよく挟む隙間トリックだけど、万々いつもの感じで回すと当然傾きリスクが発生する。じゃあゆっくり回すのか。それともサマーソルトだけゆっくり回すことで、トリック内でのメリハリを作るのか、それとも自分なりの解釈を加えるのか。成功率以外の点で、単純に遊ぶだけではないこだわりができる。
力強さはないかもしれないけど、スリープさせるだけなら遜色はない。そう思うと、いわゆる信頼性や良いものだと思っていたものはトリック成功の可能性だったりしたんだなって。でもこいつ傾きやすい癖に小回りやコントロールするときっちり動くんだよ。そして投げやすさなど、誰でも感じる部分の感触がよい。
実は幅が狭いだけ、それによる個人的なトリックの未成熟が少し出るだけで、あとは非常に高水準。
ヨーヨーを買う時に、もちろん予算はあるんだけど、それ以外にもメーカー的NGがあったり、形状、重さ、プロモーションの程度によって知らないうちに排除してしまったりと、そしてトリックへの対応力。過度の製品の信頼性。そんなもん捨てて、パノラマに選ばれたつもりで遊んでみる。プレイを少しだけ変化を試みる。遊びやすさやフィーリング。それ以外の第3の感触は案外自分の浅いところに眠っているのかもしれない。そんな新たな性癖を開発・発掘させる非常に試み度のあるヨーヨー。